この記事は、公開されている情報や犬種に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
叱る前に分けたい3つの視点
犬がしっぽを追う理由は、わがままや反抗だけで説明できる行動ではありません。犬にとっては、怖さ、興奮、学習、退屈、体の違和感、飼い主さんとの距離の取り方など、複数の理由が重なって出ることがあります。まずは「いつ」「どこで」「何のあとに」出るのかを分けて見ると、対応を間違えにくくなります。
愛犬家にとって大切なのは、行動をすぐに止めることより、犬が何を伝えようとしているかを読むことです。声を荒げると一時的に止まっても、不安や警戒が強くなることがあります。落ち着ける距離を作る、環境を変える、できた行動を褒める、必要なら専門家に相談するという順番で考えると、犬にも人にもやさしい対応になります。
同じ行動でも、子犬、成犬、シニア犬、怖がりな犬、活動量の多い犬では背景が変わります。たとえば散歩中の反応なら、音や人への警戒、足の痛み、暑さ、過去の経験、飼い主さんのリードの持ち方まで関係することがあります。犬種や性格で決めつけず、その日の状況を一つずつ分けて見ることが大切です。
行動を変えたいときは、犬が失敗しにくい環境を先に作ると成功しやすくなります。刺激が強い場所を避ける、距離を取る、短い練習にする、落ち着けた瞬間を褒める、睡眠や運動量を整えるなど、暮らし全体を見直すと、叱る回数を増やさずに改善のきっかけを作れます。
| 視点 | 見るポイント | 対応の方向 |
|---|---|---|
| 環境 | 音、人、犬、場所、暑さなど | 刺激を減らす、距離を取る |
| 学習 | その行動のあと何が起きたか | 望ましい行動に報酬を出す |
| 体調 | 痛み、疲れ、睡眠、食欲の変化 | 無理をさせず相談する |
| 記録すること | 例 | 見えてくること |
|---|---|---|
| 場面 | 玄関、散歩道、留守番前、食後 | きっかけになりやすい環境 |
| 直前の出来事 | 音が鳴った、人が近づいた、触った | 怖さや興奮の原因 |
| 体の様子 | 歩き方、呼吸、食欲、睡眠 | 痛みや不調の可能性 |
| 対応の結果 | 距離を取ると落ち着く、褒めると続く | 合う対応と合わない対応 |
相談したほうがよいサイン
行動の変化が急に強くなった、生活に支障がある、唸る・噛む・パニックになる、体調の変化を伴う場合は、しつけだけで抱え込まないことが大切です。動画を短く撮っておくと、動物病院やトレーナーに相談するときに状況を伝えやすくなります。
特に、以前は平気だったことを急に嫌がる、触ると怒る、散歩を拒む、夜に落ち着かない、排泄や食欲も変わるといった場合は、行動問題だけでなく体調面も確認したいサインです。安心して暮らすためにも、家庭でできる工夫とかかりつけ医・専門家への相談を組み合わせて考えましょう。
行動の理由を考えることは、犬を甘やかすことではありません。理由を分けて見るほど、してほしい行動を教えやすくなり、犬も飼い主さんも落ち着いて練習できます。うまくいかない日があっても、叱るより前に条件を下げる、距離を取る、休ませるという選択肢を持っておくと、関係をこじらせにくくなります。
- 急に始まった、または頻度が増えている
- 痛みや体調不良が疑われる
- 家族や犬同士の安全に関わる
- 飼い主さんだけで対応すると悪化しそう
たまに回るだけなら、遊びのこともある
子犬や若い犬が、ふと自分のしっぽに気づいて追いかけることがあります。短時間でやめられる、呼べば戻る、体を傷つけないなら、遊びや探索の一部として見られることもあります。

ただし、かわいいからと毎回笑う、声をかける、撮影するなどが続くと、「これをすると人が反応する」と学習することがあります。注目を得る行動として強まることもあるため、頻度が増えてきたら対応を変えます。
退屈・ストレス・学習で増えることがある
散歩や遊びが足りない、留守番が長い、生活リズムが不安定、環境変化があった、といった状況では、しっぽ追いがエネルギーの出口や気持ちを落ち着ける行動になることがあります。AKCも、退屈や注目を得たい気持ちを理由の一つとして紹介しています。

まずは、散歩の中ににおい嗅ぎを入れる、知育玩具やノーズワークを使う、しっぽを追い始める前に別行動へ誘うなど、犬が選べる行動を増やします。叱って止めるより、落ち着いて別の行動へ移れる経験を重ねるほうが安全です。
痛みやかゆみが隠れることもある
急に始まった、しっぽを噛む、腰やお尻を気にする、皮膚が赤い、ノミ・アレルギー・肛門まわりの違和感がありそうな場合は、行動だけで片づけないでください。VCAは、しっぽ追いや回転が強くなると、実際にしっぽをつかんで傷つけることがあると説明しています。

後ろ足、腰、肛門腺、皮膚、神経の問題が原因で、犬がその部位に向かって回るように見えることもあります。突然の変化、痛がる、触られるのを嫌がる、排便時に違和感がある場合は受診の目安です。
止めにくい場合は専門家へ
呼んでも止まらない、毎日何度も続く、しっぽを傷つける、生活に支障が出る場合は、常同行動や強迫的な行動として扱う必要があります。MSD Veterinary Manualや査読研究では、しっぽ追いが犬の強迫関連行動として扱われることがあります。

この段階では、家庭で叱って止めようとするほど悪化することがあります。まず動物病院で痛みや皮膚・肛門まわりを確認し、必要に応じて獣医行動診療やトレーナーと環境調整を行いましょう。
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参考情報
- VCA Animal Hospitals「Compulsive Disorders in Dogs」
- MSD Veterinary Manual「Behavior Problems of Dogs」
- American Kennel Club「Why Do Dogs Chase Their Tail?」
- PLoS ONE「Environmental Effects on Compulsive Tail Chasing in Dogs」
