この記事は、公開されている情報や犬種に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
小型犬の健康チェックでよく聞く「パテラ」。正式には膝蓋骨脱臼と呼ばれ、膝のお皿にあたる骨が本来の溝からずれてしまう状態を指します。チワワ、トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、マルチーズなど、小型犬で話題になりやすい関節トラブルです。
ただし、パテラは「小型犬なら必ずなる病気」でも、「少し歩き方が変なら全部パテラ」でもありません。生まれつきの骨格、成長、体重、筋肉、床の滑りやすさ、ジャンプや段差、過去のけがなど、いくつもの要素が関わります。
この記事では、犬のパテラがどんな状態なのか、どんなサインに気づきたいのか、家庭でできる範囲と受診したい目安を分けて整理します。診断や治療方針は動物病院での確認が必要ですが、日々の観察ポイントを知っておくと、愛犬の膝を守る暮らしを作りやすくなります。

パテラとは、膝のお皿がずれやすい状態
犬の膝には、太ももの骨の前側に「膝蓋骨」という小さな骨があります。人でいう膝のお皿です。通常は大腿骨の溝に沿って動き、膝を曲げ伸ばしするときに筋肉や腱の力を伝える役割をしています。
パテラでは、この膝蓋骨が内側または外側へずれます。VCA Animal Hospitalsは、膝蓋骨脱臼は膝蓋骨が正常な位置から外れる状態で、小型犬では内側へずれる内方脱臼が多いと説明しています。ACVSも、若い小型犬では内方への脱臼がよく見られ、犬によって症状の出方に幅があるとしています。
軽い場合は、膝のお皿が一時的にずれても自然に戻り、ふだんは普通に歩いて見えることがあります。一方で、ずれやすさが強い、痛みがある、関節の変形や炎症が進む、靭帯やほかの関節に負担がかかる場合は、歩き方や生活の質に影響します。
よく見られるサイン
パテラでよく知られるサインは、歩いている途中で急に片足を上げ、数歩スキップするように歩いたあと、また普通に歩き出す様子です。これは膝蓋骨が一時的にずれ、犬が足を伸ばしたり動かしたりするうちに戻っている可能性があります。
- 後ろ足を急に上げる、スキップするように歩く
- 走るときに片足を使わない瞬間がある
- 段差、ジャンプ、階段を嫌がる
- 散歩の途中で立ち止まる、歩きたがらない
- 後ろ足を伸ばす、膝を気にする、触られるのを嫌がる
- 両後ろ足でぴょんぴょん跳ねるように走る
ただし、これらのサインだけでパテラと決めることはできません。股関節、腰、足先、靭帯、神経、爪や肉球の痛みでも歩き方は変わります。特に急に足をつけない、強く痛がる、元気や食欲も落ちる場合は、早めに診察を受けてください。

グレードは「今のずれやすさ」を見る目安
動物病院では、触診や歩行の確認、必要に応じて画像検査などを行い、膝蓋骨がどの程度ずれやすいかを評価します。パテラは一般にグレード1から4で表されますが、これは家庭で自己判定するものではありません。
| 目安 | 状態のイメージ | 暮らしで見えること |
|---|---|---|
| グレード1 | 押すと外れるが自然に戻る | 無症状、またはたまにスキップが見えることがある |
| グレード2 | 自然に外れることがあり、戻ることもある | ときどき足を上げる、違和感が出ることがある |
| グレード3 | 外れている時間が長く、手で戻せる | 歩き方の変化や膝への負担が目立ちやすい |
| グレード4 | 常に外れていて戻しにくい | 足の使い方、骨格、生活の質に大きく影響しやすい |
ACVSは、軽度では症状が目立たないことがある一方、重度では跛行、痛み、関節炎、骨の変形などにつながる可能性があると説明しています。グレードだけでなく、痛み、年齢、体重、筋肉、生活環境、ほかの関節の状態を合わせて考えることが大切です。
なぜ小型犬で多く話題になるのか
小型犬でパテラが話題になりやすい理由には、骨格や膝まわりの構造が関係します。膝蓋骨が通る溝の深さ、太ももの骨とすねの骨の並び、筋肉や腱の引っ張る方向、成長期の骨格などが影響し、膝蓋骨が内側へずれやすくなることがあります。
VCAは、膝蓋骨脱臼は先天的または発達上の要因で起こることが多く、外傷で起こることもあると説明しています。つまり、家の中で一度滑ったから突然すべてが始まるというより、もともとのずれやすさに、体重や床、ジャンプ、筋力、加齢などが重なって症状が見えやすくなることがあります。
犬種名だけで「大丈夫」「危ない」と決めるのではなく、愛犬の歩き方、体型、生活環境をセットで見ることが現実的です。MIX犬でも親犬種の体格や骨格、生活環境によって出方は変わります。
家庭でできる関節ケア
体重を増やしすぎない
膝にかかる負担を考えると、体重管理はとても大切です。少しの増量でも、小型犬の細い脚には大きな負担になります。体重だけでなく、肋骨が軽く触れるか、腰のくびれがあるか、上から見た体型が丸くなりすぎていないかを定期的に確認しましょう。
食事量を急に減らすのではなく、主食量、おやつ、家族からの一口、運動量をまとめて見直します。減量が必要な場合は、持病や年齢に合わせた調整が必要なので、動物病院で相談すると安心です。
滑りにくい床と段差対策をする
フローリングで足が横に滑ると、膝まわりに余計なねじれがかかります。よく走る動線、ソファやベッドの前、食事場所、玄関までの通路には、滑りにくいマットやカーペットを敷くと負担を減らしやすくなります。
高い場所からの飛び降りも注意したいポイントです。ソファやベッドに上がる習慣がある犬には、低いステップやスロープを用意し、勢いよくジャンプしない導線を作ります。爪や足裏の毛が伸びすぎていると滑りやすくなるため、足先のケアも床対策の一部です。

運動は「休ませるだけ」ではなく、無理なく続ける
膝が心配だからといって、まったく動かさない生活にすると筋肉が落ち、かえって関節を支えにくくなることがあります。痛みがない範囲で、平らな道をゆっくり歩く、急なダッシュやジャンプを避ける、疲れる前に休むといった調整が現実的です。
ただし、すでに痛みがある、足をつけない、診断後の運動制限がある場合は別です。運動量やリハビリの内容は、獣医師の指示に合わせてください。

受診を優先したいサイン
パテラは、軽いサインが長く続くこともあれば、急に痛みが強く見えることもあります。次のような変化があれば、家庭ケアで様子を見すぎず動物病院へ相談しましょう。
- 急に後ろ足をつけなくなった
- 痛がって鳴く、触られるのを強く嫌がる
- スキップや片足上げの回数が増えている
- 段差や散歩を嫌がるようになった
- 膝や足先をなめ続ける
- 左右の後ろ足の使い方が明らかに違う
- 転倒、落下、衝突のあとから歩き方が変わった
緊急性が高いのは、足をまったくつけない、強い痛みがある、けがの直後から歩けない、ぐったりしているなどの場合です。パテラに見えても、前十字靭帯や骨折、股関節、腰の問題が隠れていることもあります。自己判断でマッサージしたり、無理に足を伸ばしたりしないでください。
治療は「グレードだけ」で決まらない
パテラの治療には、体重管理、運動調整、痛みや炎症への対応、リハビリ、必要に応じた外科手術などがあります。どの方法が適しているかは、グレード、痛み、年齢、活動量、骨格、関節炎の有無、飼い主さんの生活環境によって変わります。
VCAは、軽度で症状がない場合は経過観察や体重管理が選ばれることがある一方、症状がある犬や重度の犬では手術が検討されることがあると説明しています。ACVSも、跛行や痛みがある犬、重度の脱臼では外科的な安定化が推奨される場合があるとしています。
「グレード1だから絶対に安心」「グレード2なら必ず手術」というように単純には決まりません。大切なのは、今の痛み、生活への影響、将来の悪化リスクを獣医師と一緒に見ていくことです。
子犬期から見ておきたいこと
小型犬では、子犬期から膝の状態をチェックしてもらうと安心です。ワクチンや健康診断のタイミングで、歩き方、膝の触診、体重、足先の滑りやすさを相談しておくと、早めに生活環境を整えやすくなります。
また、元気な子ほどソファから飛び降りたり、フローリングで急旋回したりしがちです。若い頃から滑りにくい床、段差対策、適正体重、爪切り、足裏の毛のケアを習慣にすると、膝だけでなく腰や股関節への負担も減らしやすくなります。
まとめ
- パテラは、膝のお皿である膝蓋骨が本来の位置からずれやすい状態
- 小型犬では内側へずれるタイプが話題になりやすい
- スキップ歩様、片足上げ、段差を嫌がる様子は観察したいサイン
- 家庭では、体重管理、滑りにくい床、段差対策、無理のない散歩が大切
- 急な跛行、痛み、足をつけない状態は早めに受診する
パテラは、名前だけ聞くと不安になりやすい関節トラブルです。でも、仕組みとサインを知っておくと、日々の床づくり、体重管理、散歩の調整、受診のタイミングが見えやすくなります。愛犬の歩き方を責めるように見るのではなく、「昨日と違うかな?」とやさしく観察しながら、膝にやさしい暮らしを整えていきましょう。
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