「愛犬のポメラニアンが急に後ろ足を上げて歩くようになった…」「スキップのような歩き方をする」こんな症状に心当たりはありませんか?
それはもしかするとパテラ(膝蓋骨脱臼)のサインかもしれません。
パテラは小型犬に多い関節の病気で、特にポメラニアンは発症しやすい犬種のひとつ。放置すると歩行困難になることもあり、重度になると手術が必要になるケースも少なくありません。
でも安心してください。パテラは早期発見と日頃の予防対策で、症状の進行を防ぐことができる病気です。
この記事では、パテラの基本的な仕組みからグレード別の症状、今日からできる予防策、そして気になる治療費用まで、ポメラニアンの飼い主さんが知っておくべきことを徹底解説します。
パテラ(膝蓋骨脱臼)とは?ポメラニアンに多い理由
パテラとは、後ろ足の「膝のお皿」にあたる膝蓋骨(しつがいこつ)が正常な位置からずれてしまう病気です。正式名称は「膝蓋骨脱臼」ですが、英語の「Patella(パテラ)」から、この呼び名で広く知られています。
膝蓋骨の役割と脱臼の仕組み
膝蓋骨は、大腿骨(太ももの骨)にある「滑車溝(かっしゃこう)」というくぼみに収まっています。この骨がスムーズに上下することで、犬は膝を曲げ伸ばしして歩いたり走ったりできるのです。
しかし何らかの原因で膝蓋骨が滑車溝から外れてしまうと、膝関節がうまく動かせなくなり、痛みや歩行障害が起こります。
小型犬では膝蓋骨が内側に外れる「内方脱臼」が圧倒的に多く見られます。
なぜポメラニアンはパテラになりやすいの?
ポメラニアンがパテラを発症しやすい理由は、主に遺伝的な骨格の特徴にあります。
- 滑車溝が浅い:生まれつき膝蓋骨を収める溝が浅い個体が多い
- 骨格が華奢:細い骨に負担がかかりやすい
- 靭帯が弱い:膝蓋骨を支える靭帯の力が弱い傾向がある
- 活発な性格:室内でも走り回るため膝への負担が大きい
アニコム損保の調査によると、小型犬全体の約11%がパテラを発症しているというデータもあり、ポメラニアンはその中でも特にリスクが高い犬種とされています。
トイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、マルチーズ、パピヨン、シーズーなど。これらの小型犬を飼っている方は、特に注意が必要です。
パテラの4つのグレードと症状|愛犬はどの段階?
パテラは脱臼の程度によってグレード1〜4の4段階に分類されます。グレードが上がるほど症状は重くなり、治療も難しくなります。

グレード1(軽度)
| 膝蓋骨の状態 | 手で押すと脱臼するが、離すと自然に戻る |
| 主な症状 | ほぼ無症状。激しい運動後にたまにスキップすることがある |
| 日常生活への影響 | ほとんどなし |
健康診断で初めて指摘されるケースが多く、飼い主さんが気づかないことも珍しくありません。
グレード2(中程度)
| 膝蓋骨の状態 | 簡単に脱臼するが、膝を伸ばしたり手で押すと戻る |
| 主な症状 | 時々足を浮かせる、スキップ歩行、急に「キャン!」と鳴く |
| 日常生活への影響 | 症状が出たり引いたりを繰り返す |
この段階で飼い主さんが異変に気づくことが多いです。放置すると関節炎や靭帯の損傷につながる可能性があります。
グレード3(重度)
| 膝蓋骨の状態 | 常に脱臼した状態。手で押すと一時的に戻る |
| 主な症状 | 常に足を引きずる、腰を落として歩く、運動を嫌がる |
| 日常生活への影響 | 明らかな歩行異常が見られる |
骨の変形が始まっていることも多く、手術を検討する段階です。
グレード4(最重度)
| 膝蓋骨の状態 | 常に脱臼し、手で押しても戻らない |
| 主な症状 | 後ろ足を地面につけない、うずくまって歩く、歩行困難 |
| 日常生活への影響 | 正常な歩行ができない |
骨格の変形が進行しており、手術でも完全な回復が難しいケースもあります。前十字靭帯断裂を併発することも。
グレード1〜2でも放置は禁物です。脱臼を繰り返すことで滑車溝がさらに浅くなり、症状が進行するリスクがあります。早期発見・早期対策が何より大切です。
パテラの原因|先天性と後天性の違い
パテラの原因は大きく先天性と後天性の2つに分けられます。ポメラニアンの場合は先天性が多いとされていますが、生活環境が症状を悪化させることも少なくありません。
先天性の原因
生まれつきの骨格や筋肉の異常が原因となるケースです。
- 滑車溝が生まれつき浅い
- 大腿骨や脛骨の形状に異常がある
- 膝を支える靭帯が弱い
- 膝周りの筋肉のバランスが悪い
先天性のパテラは、遺伝的要因が大きいと考えられています。子犬を迎える際は、親犬にパテラの既往歴がないか確認することも重要です。
後天性の原因
生まれた後の環境や事故によって発症するケースです。
- フローリングで滑って膝を痛める
- ソファやベッドからの飛び降り
- 交通事故や落下による外傷
- 急な方向転換や激しい運動
- 肥満による膝への過度な負担
特に滑りやすいフローリングは後天性パテラの大きな原因として知られています。日常生活で膝に負担がかかり続けることで、先天的に問題がなくても発症することがあるのです。
今日からできる!ポメラニアンのパテラ予防対策
パテラは完全に予防することは難しい病気ですが、発症リスクを下げたり、症状の進行を遅らせたりすることは可能です。ここでは飼い主さんが今日から実践できる予防策をご紹介します。

【最重要】フローリングの滑り止め対策
パテラ予防で最も効果的なのが床の滑り止め対策です。滑りやすいフローリングは、犬が常に踏ん張りながら歩くことになり、膝に大きな負担がかかります。
- ジョイントマット・タイルカーペットを敷く
- コルクマットを敷く(クッション性も◎)
- 滑り止め専用のペットマットを活用
- 滑り止めワックスを塗る
- ペット用フロアコーティングを施工
すべての床面に敷けなくても、愛犬がよく走る場所や、ソファから降りる場所だけでも対策しておくと効果的です。
タイルカーペットは汚れた部分だけ交換できて便利。床暖房対応かどうかも確認しましょう。
段差対策でジャンプを防ぐ
ソファやベッドからの飛び降りは、膝に大きな衝撃を与えます。
- 犬用スロープやステップを設置する
- ソファに登らせないようにしつける
- 低めの犬用ベッドを用意する
- 高いところに登れないよう家具を配置
ポメラニアンは活発で好奇心旺盛な性格なので、興奮して飛び跳ねることも多いですよね。「飛び乗り・飛び降り」をさせない環境づくりが大切です。
体重管理で膝への負担を軽減
肥満は膝関節への負担を大幅に増加させます。ポメラニアンの適正体重は1.8〜2.3kg程度。この範囲を大きく超えていないか、定期的にチェックしましょう。
- 定期的に体重を測定する
- おやつの与えすぎに注意
- フードの量を適正に管理
- シニア期は低カロリーフードに切り替え
ただし、体重を気にするあまり筋肉まで落としてしまうと逆効果。適度な運動で筋肉を維持しながらの体重管理が理想です。
足裏のケアを習慣に
肉球の間の毛が伸びていると滑りやすくなります。また、爪が長すぎても正しい歩行ができません。
- 肉球周りの毛を定期的にカット
- 爪切りをこまめに行う
- 乾燥した肉球には保湿クリームを
適度な運動で筋力をキープ
膝周りの筋肉を鍛えることで、膝蓋骨を正しい位置に保つ力が強くなります。
1日2回、各15〜30分程度の散歩が理想的。平坦な道をまっすぐゆっくり歩くのがベストです。
- 急な方向転換を繰り返す運動
- ジャンプを伴う遊び
- クルクル回転する動き
- 階段の上り下りを繰り返す
これらの動きは膝に負担がかかるため、できるだけ避けましょう。
関節サポートのサプリメント
獣医師の指導のもと、関節ケア用のサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。
- グルコサミン
- コンドロイチン
- 緑イ貝(ミドリイガイ)エキス
- コラーゲン
- オメガ3脂肪酸
サプリメントはパテラを「治す」ものではありませんが、関節の健康維持をサポートする効果が期待できます。
見逃さないで!パテラの初期症状チェックリスト
パテラは早期発見が何より大切。以下のような症状が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。

要チェック!パテラを疑う8つのサイン
- 散歩中に急に後ろ足を上げて歩く
- スキップのようにピョンピョン歩く
- 「キャン!」と鳴いて足を気にする
- 座るときに後ろ足を横に投げ出す
- 散歩を嫌がるようになった
- 後ろ足がX脚やO脚に見える
- 走ったあとに足を引きずる
- 高いところに登らなくなった
これらの症状が一時的に出て消えることもあります。「一度だけだったから大丈夫」と油断せず、異変を感じたら獣医師に相談することをおすすめします。
グレード1のパテラは無症状のことも多く、健康診断で初めて発見されるケースが多いです。特に子犬〜1歳の成長期は、定期的に膝の状態をチェックしてもらいましょう。
パテラの治療法と手術費用の目安
パテラの治療は、症状の重さによって内科的治療(保存療法)と外科的治療(手術)に分かれます。
内科的治療(保存療法)
グレード1〜2で痛みや歩行障害が軽い場合に選択されることが多い治療法です。
- 抗炎症薬・鎮痛剤の投与
- 関節サプリメントの服用
- 体重管理と運動制限
- 生活環境の改善(床の滑り止めなど)
- 理学療法(リハビリ)
内科的治療はパテラを「根治」するものではありませんが、症状をコントロールしながら生涯を過ごせるケースも多くあります。
外科的治療(手術)
以下のような場合は手術が推奨されます。
- グレード3〜4の重度のパテラ
- グレード1〜2でも痛みや跛行がある
- 1歳未満で発症した場合(骨格変形のリスク)
- 内科的治療で改善しない
主な手術方法には以下のようなものがあります。
- 滑車溝造溝術:膝蓋骨が収まる溝を深くする
- 脛骨粗面転移術:脛骨の位置を調整して膝蓋骨を安定させる
- 内側広筋リリース:内側に引っ張る力を軽減する
- 外側関節包縫縮術:関節包を引き締めて安定性を高める
実際の手術では、これらの術式を組み合わせて行うことが一般的です。
気になる治療費用の目安
| 治療内容 | 費用目安 |
| 初診・検査(触診・レントゲン) | 5,000円〜15,000円 |
| 内科的治療(通院1回あたり) | 3,000円〜10,000円 |
| 手術(片足) | 20万円〜40万円 |
| 手術(両足同時) | 45万円〜60万円 |
| 術前検査 | 25,000円〜30,000円 |
| 入院費(2〜3日) | 15,000円〜20,000円 |
※費用は動物病院や症状の重さによって異なります。必ず事前に見積もりを確認しましょう。
パテラは多くのペット保険で補償対象となっていますが、加入前に発症していた場合は対象外となることがあります。子犬のうちに加入しておくと安心です。ただし、保険会社によって条件が異なるため、加入前によく確認しましょう。
ポメラニアンのパテラに関するよくある質問
Q. パテラは自然に治ることはありますか?
残念ながら、一度発症したパテラが自然に治ることは基本的にありません。ただし、子犬期のごく軽度なパテラの場合、成長とともに筋肉がつくことで症状が出にくくなるケースはあります。いずれにしても定期的な経過観察は必要です。
Q. パテラでも散歩はしていいですか?
グレードや症状によりますが、適度な散歩は筋力維持のために推奨されることが多いです。ただし、以下の点に注意しましょう。
- 平坦な道をゆっくり歩く
- 階段や坂道は避ける
- 急な方向転換をさせない
- 痛みがあるときは無理させない
具体的な運動量については、かかりつけの獣医師に相談してください。
Q. 手術をすれば完治しますか?
適切な時期に手術を行えば、多くの場合で良好な経過をたどります。専門病院では手術の成功率は90%以上というデータもあります。ただし、グレード4まで進行している場合は、手術をしても後遺症が残ることがあります。だからこそ早期発見・早期治療が重要なのです。
Q. 何歳までに手術すべきですか?
1歳未満でパテラが見つかった場合は、骨格の変形を防ぐために早期手術が推奨されることが多いです。1歳以上の成犬の場合は、症状の進行具合を見ながら判断します。高齢になると麻酔のリスクが高まるため、手術が必要な場合はなるべく早めに検討することをおすすめします。
Q. 抱っこの仕方で気をつけることは?
後ろ足をぶらんとさせた状態で抱っこすると、膝に負担がかかることがあります。抱っこするときは、お尻と胸を支えて体全体を安定させるようにしましょう。また、抱っこから降ろすときは必ず床に優しく置き、飛び降りさせないようにしてください。
まとめ|愛犬のためにできることから始めよう

ポメラニアンのパテラ(膝蓋骨脱臼)について詳しく解説してきました。最後に、この記事のポイントをまとめます。
- パテラは膝のお皿が正常な位置からずれる病気で、ポメラニアンは発症リスクが高い
- グレード1〜4の4段階があり、早期発見が重要
- 先天性と後天性の原因があり、生活環境の改善で予防・進行抑制が可能
- フローリングの滑り止め対策が最も効果的な予防法
- 体重管理・段差対策・足裏ケアも忘れずに
- スキップ歩行や足を上げる症状があれば早めに受診を
- 手術費用は片足20〜40万円程度。ペット保険の活用も検討を
パテラは完全に予防することは難しい病気ですが、日頃の環境づくりと早期発見で、愛犬が元気に過ごせる可能性は大きく高まります。
「うちの子はまだ大丈夫」と思っていても、無症状のまま進行していることもあります。ぜひこの記事をきっかけに、愛犬の歩き方をよく観察してみてください。そして、できることから予防対策を始めてみましょう。
愛するポメラニアンとの毎日が、いつまでも健康で幸せなものでありますように。

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