この記事は、公開されている情報や犬種に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
マルチーズは、真っ白な長い被毛と小さな体で「上品な抱き犬」という印象を持たれやすい犬種です。ふんわりした見た目、黒い目と鼻のコントラスト、家族のそばに寄り添う姿に惹かれる人も多いでしょう。
でも、マルチーズはただ飾られるためだけに生まれた犬ではありません。JKCの犬種紹介では、犬種名はマルタ島だけを意味するものではなく、地中海沿岸の港や海上の町に関わる言葉に由来すると説明されています。古くから人の近くで暮らし、港町や住まいで小さな害獣を追う実用的な一面も持っていた犬です。
この記事では、マルチーズを「白い抱き犬」というイメージだけでなく、古い地中海の小さな相棒という視点から紹介します。性格、体型、被毛、日常ケア、健康面の注意点まで、暮らす前に知っておきたいリアルを整理していきます。

マルチーズってどんな犬?基本情報
マルチーズは、FCIでは第9グループの愛玩犬に分類される小型犬です。JKCの犬種標準では原産国を「中央地中海沿岸地域」とし、体重はおおよそ3〜4kgが目安とされています。AKCでは体高7〜9インチ、体重7ポンド未満、寿命12〜15年が目安として紹介されています。
白く長い被毛が有名ですが、体の中身は意外と活発です。AKCはマルチーズを「playful / charming / gentle」としつつ、小さな体でも警戒心のあるウォッチドッグになり、報酬を使ったトレーニングによく反応すると説明しています。見た目の繊細さと、快活でよく動く性質の両方を持つ犬種です。
| 原産地域 | 中央地中海沿岸地域 |
| 犬種グループ | 愛玩犬/トイグループ |
| 体重の目安 | JKCでは3〜4kg、AKCでは7ポンド未満が目安 |
| 体高の目安 | AKCでは7〜9インチ |
| 被毛 | 長くまっすぐな白いシングルコート |
| 性格の傾向 | 明るい、愛情深い、遊び好き、家族との距離が近い |
| 注意したい健康面 | 歯周病、膝蓋骨脱臼、肝シャントなどの先天的肝疾患、涙やけ、被毛のもつれなど |
「白い抱き犬」の奥にある古い歴史
地中海の港町で人の近くにいた小さな犬
マルチーズの歴史を考えるとき、「マルタ島の犬」と単純に決めつけないことが大切です。JKCは、犬種名の語源がセム語の「malat」に関係し、港や避難所を意味する言葉として、アドリア海のメレダ島、シチリアのメリタ、マルタ島など複数の地名に見られると説明しています。
この背景から見ると、マルチーズは貴婦人に抱かれるだけの犬ではなく、地中海沿岸の人の暮らしに長く寄り添ってきた小さな犬といえます。古代ローマで愛された記録がある一方、港や倉庫、住まいの周辺で小さな齧歯類を追う犬としての側面も語られてきました。
もちろん現代のマルチーズに、ねずみ捕りの仕事を期待する必要はありません。ただ、音や動きに反応する、家族の近くで周囲をよく観察する、遊びへの反応がよいといった性質は、ただ「おとなしい抱き犬」と考えるより理解しやすくなります。
小さくても、退屈に強い犬ではない
マルチーズは運動量だけで見れば大型犬ほどの散歩は必要ありません。しかし、毎日ほとんど刺激がないまま過ごすと、吠え、要求、いたずら、分離不安のような困りごとにつながることがあります。PetMDも、マルチーズには毎日の運動、メンタル刺激、ポジティブなトレーニングが必要だと説明しています。
短い散歩、室内遊び、簡単なトリック、知育トイ、ブラッシングや歯磨きの練習などを組み合わせると、マルチーズの「人と関わりたい」「何かをしたい」という気持ちを健全に満たしやすくなります。

外見的特徴:白いシングルコートは美しいけれど手間がかかる
被毛は「抜けにくい」より「絡みやすい」と考える
AKCの犬種標準では、マルチーズの被毛はアンダーコートのないシングルコートで、長く平らに垂れる白い被毛とされています。ふわふわのダブルコート犬とは違い、絹のようにまっすぐ伸びる毛が特徴です。
この被毛は抜け毛が少ない印象を持たれやすい一方、毛玉やもつれができやすい被毛でもあります。特に耳の後ろ、脇、胸、内股、尾の付け根は絡みやすく、放置すると皮膚が引っ張られて痛みや炎症の原因になることがあります。
長いフルコートを保つなら、毎日のブラッシングとコーミングはほぼ必須です。家庭犬として短めに整える場合でも、目元、口まわり、足先、耳、脇のケアは欠かせません。見た目の美しさより、皮膚が蒸れず、犬が動きやすい状態を優先しましょう。
白い毛だからこそ涙やけと口まわりが目立つ
マルチーズは白い被毛のため、涙やけや口まわりの汚れが目立ちやすい犬種です。見た目だけの問題に見えても、涙が多い、目やにが増えた、皮膚が赤い、かゆがるといった変化がある場合は、目、皮膚、歯、食事、アレルギーなど複数の要因が関係していることがあります。
日常的には、濡れた部分をやさしく拭き、毛玉にならないよう整えることが基本です。強い洗浄剤や自己判断のサプリに頼る前に、涙やけが急に増えた、片目だけ強い、においや赤みがある場合は獣医師に相談しましょう。
性格・気質:甘えん坊だけど、甘やかしすぎると主張も育つ
家族との距離が近い、よく見ている犬
マルチーズは家族との距離が近く、人の動きをよく観察します。抱っこや膝の上が好きな子もいますが、それだけがこの犬種の魅力ではありません。飼い主の声、表情、動きに反応し、家庭内の空気に敏感に寄り添うタイプの犬です。
一方で、いつも抱っこ、吠えたらすぐ要求が通る、離れる練習をしない、という暮らし方を続けると、要求吠えや留守番の不安が強くなることがあります。小さいからこそ、落ち着いて待つ、呼ばれたら来る、ベッドで休む、手足や口を触られる、といった基本を短く楽しく練習しておくと安心です。
叱って従わせるより、できた瞬間を褒める、短い成功を積み重ねる、家族全員で同じルールにする方法が向いています。AKCも、マルチーズは時に頑固な面を見せることがあるものの、報酬ベースのトレーニングによく反応すると説明しています。

マルチーズと暮らすときのケア
毎日のケアは「美容」ではなく生活管理
マルチーズのケアで最初に考えたいのは、被毛、目元、口まわり、歯、耳、爪、足裏です。長い被毛をきれいに保つには時間がかかりますが、短くカットしていてもケアが不要になるわけではありません。
ブラッシングは、表面だけをなでるのではなく、皮膚に近い部分のもつれを確認することが大切です。嫌がる子は一度に全身を終わらせようとせず、今日は耳の後ろ、明日は脇、というように短く区切ると続けやすくなります。
また、小型犬は寒さや暑さ、床の滑り、段差の影響を受けやすいことがあります。室温管理、すべりにくい床、低めのステップ、体に合ったハーネスなど、家の中の環境を小さな体に合わせることもケアの一部です。
歯磨きは早めに習慣化したい
PetMDは、マルチーズを含むトイ犬種では歯周病のリスクが高いと説明しています。小さな口に歯が密に並ぶため、歯垢や歯石がたまりやすく、放置すると口臭、歯肉炎、歯のぐらつき、痛みにつながります。
いきなり歯ブラシを入れるのではなく、口まわりを触る、唇を少しめくる、犬用歯みがきシートに慣らす、短時間だけ歯ブラシを当てる、という順番で練習すると失敗しにくくなります。定期的な健康診断で歯と歯ぐきの状態を見てもらうことも大切です。
健康面で注意したいこと
膝蓋骨脱臼:小型犬で見られやすい膝のトラブル
膝蓋骨脱臼は、膝のお皿が正常な位置から外れやすくなる状態です。PetMDは、マルチーズで注意したい健康問題のひとつとして膝蓋骨脱臼を挙げています。片足を上げて歩く、スキップのような歩き方をする、急に後ろ脚を気にする、といった様子が見られることがあります。
完全に予防できるものではありませんが、太らせない、滑る床を避ける、高い場所から飛び降りさせない、足裏の毛や爪を整える、といった日常管理は足腰への負担を減らす助けになります。違和感があるときは早めに診察を受けましょう。
肝シャントなど、子犬期に確認したい病気もある
AKCは、責任ある繁殖では膝蓋骨脱臼や心疾患に加え、子犬期に胆汁酸検査で肝シャントや微小血管異形成などの先天的肝疾患を確認することを推奨しています。PetMDも、マルチーズの子犬では先天的な肝臓の問題に注意が必要だと説明しています。
小さすぎる子、成長が遅い子、食後にぼんやりする、発作のような症状がある、よだれやふらつきがあるなどの場合は、早めに獣医師へ相談してください。迎える前には、親犬の健康管理、子犬の検査歴、ワクチン、食事、繁殖環境を確認することも大切です。

マルチーズが向いている家庭・注意したい家庭
マルチーズは、犬と近い距離で暮らしたい人、毎日のケアを楽しめる人、短いトレーニングをこつこつ続けられる家庭に向きやすい犬種です。散歩量は多すぎなくても、遊び、声かけ、学習、手入れを通じて人と関わる時間を必要とします。
一方で、被毛ケアの時間をほとんど取れない家庭、留守番が長く刺激が少ない家庭、小さな子どもが勢いよく抱き上げたり追い回したりしやすい環境では、犬にも人にも負担が出ることがあります。PetMDも、若い子どもとの接し方には見守りが必要で、やさしく扱える年齢の子どもがいる家庭に向きやすいと説明しています。
「小さいから楽」と考えるより、「小さいからこそ丁寧な扱いと環境調整が必要」と考えると、マルチーズとの暮らしはずっと安定します。白い被毛の美しさ、家族への愛情、遊び好きな明るさを守るためにも、ケアとルールをセットで用意してあげましょう。
まとめ:マルチーズは、繊細に見えて芯のある小さな家庭犬
マルチーズは、白い被毛と上品な雰囲気で語られがちな犬種ですが、実際には古い地中海の歴史を持ち、人のそばでよく観察し、よく反応する小さな相棒です。抱き犬としての愛らしさだけでなく、活発さ、学習意欲、家族への結びつきも魅力です。
そのぶん、被毛、歯、膝、目元、留守番、要求行動など、日常で見てあげたいポイントもはっきりしています。マルチーズと暮らすなら、かわいさに寄りかかるだけでなく、「小さな体に合わせた丁寧な生活管理」を用意してあげることが大切です。
参考情報
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ「マルチーズ」
- American Kennel Club「Maltese Dog Breed Information」
- American Kennel Club「Official Standard of the Maltese」
- PetMD「Maltese Dog Breed Health and Care」
- The Kennel Club「Maltese Breed Standard」
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