この記事は、公開されている情報や犬種に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
この記事の要点
急に抱っこを嫌がり始めたときは、性格より先に痛みや体調変化を疑います。
抱き上げる必要がある場面では、胸と後肢側を支え、犬が身構える前に無理をしません。
触れると鳴く、歩き方が変わった、転倒や呼吸の異常がある場合は早めに動物病院へ相談します。
犬を抱っこしようとしたとき、体をよける、固まる、うなる、足を突っぱねる。そんな反応を見ると、「抱っこが嫌いなのかな」「わがままなのかな」と感じるかもしれません。
でも、抱っこを嫌がる理由はひとつではありません。体の痛み、持ち上げ方への不安、過去の怖い経験、自由に動けないことへの抵抗、犬種や性格による距離感などが重なっていることがあります。

まず見たいのは「抱っこそのもの」ではなく前後の変化
抱っこを嫌がる犬を理解するときは、反応が出た瞬間だけでなく、前後の流れを見ると原因を分けやすくなります。急に嫌がるようになったのか、子犬の頃から苦手なのか、特定の人や場面だけなのかで、見直すポイントが変わります。
| 見る場面 | 確認したいこと | 考えやすい背景 |
|---|---|---|
| 抱き上げる前 | 近づくと逃げる、耳が下がる、目をそらす | 怖さ、距離を取りたい気持ち、過去の経験 |
| 持ち上げた瞬間 | 鳴く、体を固める、腰や足をかばう | 痛み、支え方の不安定さ、関節や背中の違和感 |
| 抱っこ中 | 降りたがる、呼吸が荒い、体をねじる | 拘束感、暑さ、落下への不安、距離感の好み |
| 降ろしたあと | すぐ離れる、隠れる、足をなめる、歩き方が変 | 不快感の残り、体の痛み、嫌な学習 |
理由1. 体の痛みや違和感がある
以前は平気だったのに急に抱っこを嫌がる場合は、まず体の違和感を疑います。抱き上げると、胸、脇、背中、腰、膝、足先などに力がかかります。関節や背中が痛い犬にとっては、ほんの短い抱っこでも不快な刺激になることがあります。
PDSAは、犬の関節炎ではこわばり、足を引きずる、散歩で遅くなる、元気がない、階段やジャンプを嫌がるなどが見られると説明しています。抱っこ嫌いに見えても、実際には「持ち上げられると痛い」「体勢がつらい」というサインかもしれません。

受診を優先したいサイン
- 急に抱っこを嫌がるようになった
- キャンと鳴く、うなる、触ると怒る
- 背中を丸める、足を引きずる、段差を避ける
- 食欲、元気、排泄、睡眠に変化がある
- 落下、衝突、激しい運動のあとから様子が違う
- シニア犬で、寝起きや散歩後にこわばりが目立つ
家庭では、無理に抱き上げて原因を確かめようとしないことが大切です。痛みがある犬を押さえると、犬も人もけがをすることがあります。違和感が続く、急に変わった、触ると強く嫌がる場合は、動物病院で相談しましょう。
理由2. 持ち上げ方が不安定で怖い
犬は、地面から足が離れると自分で逃げたり姿勢を直したりしにくくなります。脇だけを持つ、前足だけを引き上げる、急に高く持ち上げる、体を縦に伸ばすような抱き方は、不安定で怖い経験になりやすいです。
特に胴長の犬、シニア犬、関節や背中に不安がある犬、小型犬は、支え方の小さな違いが負担になります。抱っこが必要なときは、胸側とお尻・後ろ足側を同時に支え、体を水平に近く保ち、犬の体が宙でぶらつかないようにします。

理由3. 近づき方やタイミングが怖い
抱っこが苦手な犬の中には、抱かれることよりも「急に上から手が伸びてくること」を怖がっている子もいます。寝ているところ、食べているところ、遊びに集中しているところ、逃げ場がない場所で急に触られると、犬は驚きます。
AKCは、犬のボディランゲージを読むときに、しっぽだけでなく姿勢、目、口元、体全体を合わせて見ることが大切だと説明しています。AVMAも、犬との接し方では警戒サインを知り、無理な接近や強い刺激を避けることが咬傷予防につながるとしています。

理由4. 「抱っこされると嫌なことが起きる」と学習している
抱っこのあとに、爪切り、耳掃除、投薬、苦手な服、苦手な場所への移動が毎回続くと、犬は「抱っこ=嫌なことの前触れ」と覚えることがあります。これは反抗ではなく、経験から学んだ自然な反応です。
改善したいときは、いきなり長く抱くのではなく、近づく、手を添える、少し体重を預ける、すぐ下ろす、落ち着いていたら褒める、という小さな段階に分けます。怖がっている犬を叱ると、抱っこへの不安が強くなることがあります。
理由5. 抱っこより「自分の足で動きたい」子もいる
犬によって、人との距離感には大きな個体差があります。体をくっつけているのが好きな子もいれば、そばにはいたいけれど抱え込まれるのは苦手な子もいます。これは愛情がないという意味ではありません。
抱っこで愛情を確認しようとするより、犬が近くで休む、横に座る、名前を呼ぶと来る、手をなめる、遊びに誘うなど、その子なりの距離の取り方を見ると関係をこじらせにくくなります。
家庭でできる見直し方
- 正面から覆いかぶさらず、横から声をかけて近づく
- 抱く前に、犬が逃げられる余地を残す
- 胸とお尻側を同時に支え、体をぶら下げない
- 抱っこ時間を短くし、落ち着いているうちに下ろす
- 抱っこのあとに必ず嫌なケアを続けない
- 階段や危険な場所では、スロープ、ステップ、滑り止めも併用する
- うなる、固まる、目をそらすなどのサインが出たら一度やめる
無理に慣らさない方がいい場面
抱っこは、動物病院、災害時、危険回避などで必要になることがあります。ただし、痛みや強い恐怖がある状態で練習を続けると、抱っこへの嫌悪感が深くなることがあります。
噛みつきそうになる、抱き上げると鳴く、急に性格が変わったように見える、体に触れるだけで強く嫌がる場合は、家庭だけで解決しようとせず、まず動物病院に相談してください。体の問題が否定されたあとも困る場合は、獣医師や臨床動物行動の専門家に相談すると安心です。
まとめ:抱っこ嫌いは、犬からの「見てほしいサイン」かもしれない
- 抱っこを嫌がる理由は、痛み、怖さ、持ち上げ方、学習、距離感など複数ある
- 急に嫌がる、鳴く、歩き方が変わる場合は体の違和感を優先して考える
- 犬の不安サインは、しっぽだけでなく体全体で読む
- 抱っこは短く、安定して、犬が受け入れられる段階から練習する
- うなる、固まる、噛みそうになる反応を叱って押し切らない
- 必要な抱っこが難しいときは、獣医師や行動の専門家に相談する
よくある質問
- 抱っこを嫌がる犬は、抱っこに慣らすべきですか?
-
痛みや体調変化がないことを確認したうえで、短い接触と小さな持ち上げを犬のペースで練習します。固まる、顔を背ける、うなるなどが出たら中断してください。
- 急に抱っこを嫌がったら、どのサインを見ますか?
-
歩き方、階段やジャンプ、寝起きの動き、食欲、触れた場所への反応を確認します。急な変化や強い痛みが疑われるときは、無理に再現せず受診します。
- 安全な抱き方はありますか?
-
片手だけで脇を持ち上げず、胸と後肢側を同時に支えて体を水平に近づけます。犬の体格や病気によって方法が異なるため、心配なら獣医師に実際の支え方を確認してください。
参考情報
- PDSA|Arthritis in dogs
- AVMA|Dog bite prevention
- AKC|How to Read Dog Body Language
- AAHA|What’s Wrong? Common Pet Pain Signs
- VCA Animal Hospitals|Behavior Changes and Pain in Aging Dogs
- Merck Veterinary Manual|Behavior Problems of Dogs



