この記事は、公開されている情報や犬の健康に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
この記事の要点
お尻をこする行動は肛門嚢の詰まり・炎症だけでなく、皮膚のかゆみ、便の付着、寄生虫、痛みやしこりでも起こります。
赤い腫れ、強い痛み、血や膿、傷、排便しづらさがあれば、自宅で無理に絞らず早めに受診します。
頻度、便の状態、なめる場所、におい、左右差を記録すると、診察で原因を絞る手掛かりになります。
犬が床やカーペットにお尻をこすりつける、肛門まわりをなめ続ける、しっぽの付け根を気にする。そんな様子を見ると「肛門腺かな?」「虫がいるのかな?」と心配になります。
お尻をこする行動は、肛門腺のつまりだけでなく、皮膚のかゆみ、便の付着、排便時の痛み、寄生虫、しこりや炎症などでも起こります。家庭で確認できる範囲と、動物病院へつなぐサインを分けることが先決です。
お尻をこする行動でまず考えたいこと
英語圏では、犬がお尻を地面に引きずる行動を「scooting」と呼びます。VCA Animal Hospitalsは、定期的にお尻をこする犬では、寄生虫だけでなく、アレルギーや肛門嚢の問題がよく関係すると説明しています。
つまり、「お尻をこする=必ず肛門腺」でも、「虫がいるに違いない」でもありません。行動の頻度、肛門まわりの見た目、便の状態、痛みの有無を合わせて見ることが大切です。
よくある原因を分けて見る
1. 肛門腺・肛門嚢の不快感
犬の肛門の左右には、においの強い分泌物をためる袋があります。通常は排便時などに少しずつ出ますが、うまく出ないとたまり、違和感や炎症につながることがあります。
Merck Veterinary Manualは、肛門嚢疾患ではお尻を地面にこする、肛門まわりをなめる・噛む、排便時に痛がる・いきむといったサインが見られると説明しています。VCAも、最初のサインとしてお尻を引きずる、しっぽの付け根や肛門まわりを過剰になめることを挙げています。
2. かゆみ・皮膚炎・アレルギー
肛門まわりの皮膚が赤い、毛が薄い、なめ壊している、湿っている場合は、皮膚のかゆみや炎症も考えます。ノミ、食物や環境アレルギー、湿気、シャンプー後のすすぎ残しなど、原因はひとつとは限りません。
VCA Animal Hospitalsも、肛門嚢の不調では尾の付け根や肛門まわりを過剰になめたり噛んだりすることがあると説明しています。かゆみと肛門嚢の不快感は、別々ではなく重なって見えることがあります。

3. 便の付着・下痢・排便時の痛み
長毛の犬やお腹を壊した後は、便が毛に付いて不快になり、お尻をこすることがあります。便がゆるい、硬すぎる、排便時に鳴く、何度もいきむ場合は、肛門まわりだけでなく消化器や直腸のトラブルも考えます。
肛門腺の不快感も排便時の痛みにつながることがあるため、「こすっているか」だけでなく、便の形・回数・血や粘液の有無も一緒に記録しておくと診察で伝えやすくなります。
4. 寄生虫・異物・しこりなど
寄生虫、草や小さな異物、肛門まわりのできもの、腫れ、傷でも、お尻を気にすることがあります。Cornellは、肛門嚢にはつまりや感染、膿瘍だけでなく、まれに腫瘍も起こり得ると説明しています。
見た目で原因を決めつけず、ふくらみ、出血、膿、強いにおい、左右差、触ると痛がる様子があれば、家庭で様子見を続けないほうが安全です。
家庭でできる確認とケア
家庭でできるのは、診断ではなく「観察」と「清潔に保つこと」です。犬が嫌がるほど尾を持ち上げたり、強く押したり、無理に肛門腺を絞ったりする必要はありません。
- お尻をこする頻度とタイミングを記録する
- 肛門まわりの赤み、腫れ、出血、膿、左右差を確認する
- 便の硬さ、下痢、血便、排便時の痛みをメモする
- 便や汚れが付いている場合は、ぬるま湯やペット用シートでやさしく拭く
- 長毛で汚れやすい犬は、無理のない範囲で毛を整える
- なめ壊しが強い場合は早めに受診し、自己判断で人用薬を塗らない
Merck Veterinary Manualでは、詰まり、感染、膿瘍で処置が異なり、診断には直腸検査や必要に応じた顕微鏡検査などを用いると説明しています。初めての場合や痛がる場合は、自己流でしぼらず病院で相談しましょう。

早めに動物病院へ相談したいサイン
一度だけ軽くこすった程度で、その後は普段通りなら、まずは汚れや便の付着がないかを確認しながら様子を見ることもあります。ただし、次のような場合は早めに動物病院へ相談してください。
- お尻をこする行動が何度も続く、急に増えた
- 肛門まわりをなめ続ける、噛む、毛が抜けている
- 赤み、腫れ、しこり、出血、膿、強いにおいがある
- 排便時に鳴く、いきむ、便が出にくい
- 下痢、血便、黒い便、粘液便がある
- 触ると強く痛がる、怒る、座りにくそうにする
- 元気や食欲がない、発熱が疑われる、ぐったりしている
VCAは、肛門嚢が破裂すると血や膿が出ることがあり、肛門嚢疾患は痛みを伴うと説明しています。強い痛み、出血、膿、急な腫れがある場合は、様子見ではなく早めの受診が必要です。

診察では何を伝えるとよい?
診察では、肛門嚢の状態、皮膚の炎症、便の状態、寄生虫の可能性、できものや傷の有無などを確認します。必要に応じて肛門腺の処置、便検査、皮膚の検査、薬、食事や体重管理の相談につながります。
- いつから、どのくらいの頻度でこするか
- 散歩後、排便後、寝起きなど決まったタイミングがあるか
- 便の硬さ、下痢・血便・粘液便の有無
- 肛門まわりの写真や動画
- 最近変えたフード、おやつ、シャンプー、薬、ノミ・マダニ予防
- 過去に肛門腺トラブルがあったか
まとめ:肛門腺だけに決めつけない
犬がお尻をこする行動は、よくあるサインですが、原因はひとつではありません。軽い汚れや一時的なかゆみのこともあれば、肛門嚢の炎症、皮膚トラブル、排便時の痛み、感染、できものが隠れていることもあります。
家庭では、清潔に保つ、頻度と便の様子を記録する、強く触らないことを意識しましょう。何度も続く、痛がる、赤い・腫れる・出血する、排便に異常がある場合は、早めに動物病院へ相談してください。
よくある質問
- 犬がお尻を一度こすっただけでも受診が必要ですか?
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一度だけで、その後は普段どおりなら便の付着など一時的な刺激も考えられます。繰り返す、なめ続ける、赤い、痛がる、血や膿が出る場合は動物病院へ相談してください。
- 家庭で肛門腺を絞ってもよいですか?
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原因が肛門嚢とは限らず、炎症や膿瘍があると強い痛みや損傷につながるため、自己判断で無理に絞りません。必要性と方法は獣医師や指導を受けた専門家に確認します。
- 血や膿が見えたらどうすればよいですか?
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肛門嚢の感染や破裂などが疑われるため、なめさせず清潔なガーゼで軽く保護し、速やかに動物病院へ連絡してください。強く洗ったり押したりはしません。
参考情報
- Merck Veterinary Manual: Anal Sac Disease in Dogs and Cats(2025年更新)
- Merck Veterinary Manual: Disorders of the Rectum and Anus in Dogs
- VCA Animal Hospitals: Anal Sac Disease in Dogs
- Cornell University College of Veterinary Medicine: Anal sac diseases




