この記事は、公開されている情報や犬種に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
この記事の要点
跛行は病名ではありません。肉球や爪の傷だけでなく、骨・関節・靱帯・筋肉・神経など外から見えない問題でも起こります。
まず運動を止め、嫌がらない範囲で足先を目視します。大きな外傷、変形、立てない状態、強い痛みや神経症状は救急です。人用の鎮痛薬を与えず、迷うときは動物病院へ連絡してください。
散歩の途中や起き上がった直後に、犬が片足を浮かせる、歩幅が短くなる、急にびっこを引くことがあります。小さな異物や爪の傷が原因のこともあれば、骨・関節・靱帯・筋肉・神経など、外から見えない場所に痛みや弱さがあることもあります。
跛行(はこう)は病名ではなく、足を正常に使えないというサインです。まず激しい運動を止め、犬を歩かせすぎず、救急が必要な状態かを確認します。家庭で原因を決めつけたり、痛い場所を探そうと強く曲げ伸ばししたりしないことが大切です。

最初に救急サインを確認する
VCA Animal Hospitalsは、明らかな骨折、介助なしで立てない・歩けない状態、大きな事故の後の跛行を救急受診の目安に挙げています。次の状態があれば、自宅で詳しく調べようとせず、犬をなるべく動かさないで動物病院へ電話してください。
- 交通事故、転落、大型犬との衝突など、大きな外傷の直後
- 足が不自然な方向を向く、骨折や脱臼を疑う変形がある
- 介助しても立てない、歩けない、複数の足が急に動かしにくい
- 足先を引きずる、甲を地面につける、ふらつくなど神経症状が疑われる
- 強い痛みで鳴き続ける、呼吸が荒い、ぐったりする、意識や反応がおかしい
- 圧迫しても止まりにくい出血、深い傷、骨が見えるような傷がある
痛みが強い犬は、普段おとなしくても反射的に噛むことがあります。無理に抱き上げたり、患部を押さえ込んだりせず、病院の指示を受けて安全に運びましょう。
家庭で確認できるのは「見る」範囲まで
犬が落ち着いていて、軽く足を着けられる場合は、まず歩かせずに全身と足先を目で確認します。嫌がる、うなる、足を引く、痛がるときはそこで中止してください。
- 肉球:切り傷、擦り傷、やけどのような変色、腫れ、異物がないか
- 指の間:小石、植物の種やトゲ、赤み、湿り、においがないか
- 爪:割れ、根元からの出血、折れ、巻き込みがないか
- 脚全体:左右差のある腫れ、熱っぽさ、変形がないか
- 全身:元気、食欲、呼吸、発熱感、排泄などに変化がないか

VCAは、指の間の異物、肉球の傷、爪の損傷などが跛行の原因になり得ると説明しています。一方で、関節・靱帯・腱・神経の問題は、外見に変化がないこともあります。足先がきれいに見えても、痛みの原因がないとは限りません。
見えている異物も、深く刺さっている、出血している、犬が強く痛がる場合は自宅で抜こうとしないでください。関節を何度も曲げ伸ばす、腫れを押す、左右にひねるといった確認も、損傷を悪化させる可能性があります。
考えられる原因は肉球・爪だけではない
Merck Veterinary Manualは、跛行を筋骨格系の異常を示すサインとして説明し、骨、関節、軟部組織、筋肉、神経などを診察で評価するとしています。原因は年齢、体格、犬種傾向、運動歴、始まり方によって変わります。
| 考える場所 | 例 | 見られることがある変化 |
|---|---|---|
| 肉球・皮膚・指 | 傷、異物、炎症、やけど | なめる、出血、赤み、足を着きにくい |
| 爪 | 割れ、折れ、爪床の損傷 | 急な痛み、出血、足先を触らせない |
| 筋肉・腱 | 捻挫や筋肉・腱の損傷 | 運動後に悪化、腫れ、歩幅が短い |
| 関節・靱帯 | 膝蓋骨脱臼、前十字靱帯疾患、関節炎 | 後ろ足を浮かせる、立ち上がりにくい、休んだ後にこわばる |
| 骨 | 骨折、成長期の病気、腫瘍など | 強い痛み、腫れ、体重をかけられない |
| 神経・背骨 | 神経障害、椎間板の問題など | 足先を引きずる、ふらつく、複数肢の異常 |
たとえばACVSは、犬の前十字靱帯疾患を後ろ足の跛行と痛みの一般的な原因のひとつとして挙げ、急な外傷だけでなく、靱帯の変性、体型、体重、遺伝的要因など複数の要素が関わると説明しています。見た目だけで「軽い捻挫」と断定することはできません。
受診までにできる初動
- 走る、階段、ジャンプ、ボール遊びを止め、狭めの安全な場所で休ませる
- 排泄は短時間にし、滑る床や段差を避ける
- いつから、どの足か、きっかけ、休むと変わるかをメモする
- 安全に歩ける場合だけ、平らな場所を正面・横・後ろから短く動画に撮る
- 傷、腫れ、爪、肉球の写真を撮り、変化を記録する
- 病院へ電話し、移動方法と受診の緊急度を相談する

Cornell University College of Veterinary Medicineは、自宅で撮った歩行動画が診察時の重要な情報になると説明しています。病院では緊張や興奮で歩き方が変わることがあるためです。ただし、動画のために痛い犬を何度も歩かせる必要はありません。
人用の鎮痛薬や、別の犬に処方された薬は与えないでください。FDAは、イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、アセトアミノフェンなど、人用の痛み止めが犬に有害となる場合があり、薬を与える前に獣医師へ連絡するよう注意喚起しています。自己判断の湿布、マッサージ、固定具も避けましょう。
救急でなくても早めに相談したい目安
足を着けられない、急に始まった、痛みが強い、悪化している場合は、翌日まで待つ前に当日中の相談が安全です。軽く見えても次の変化があれば、早めに動物病院へ連絡しましょう。
- 片足をまったく着けない、数歩で座り込む
- 腫れ、熱感、傷、出血、爪の破損、異物がある
- 休ませても改善しない、数時間で悪化する、繰り返す
- 24時間以上続く、または一度治まっても再発する
- 立ち上がり、階段、ジャンプ、排泄姿勢がつらそう
- 元気・食欲低下、発熱感、震え、呼吸の変化などを伴う
- 子犬、シニア犬、持病がある犬、最近手術を受けた犬で歩き方が変わった
Cornellは、跛行が1〜2日を超える場合や、痛みが強い・急に始まった・悪化している場合は待たずに受診するよう勧めています。VCAも、跛行が24時間以上続く場合は獣医療を受ける目安としています。犬の年齢や基礎疾患によって適切なタイミングは変わるため、迷うときは電話で相談してください。

動物病院では歩き方と全身を確認する
診察では、休んでいる姿勢、立ち上がり、歩行、左右の筋肉量、腫れ、痛み、関節の動く範囲などを確認します。必要に応じてX線、超音波、CT、MRIなどが検討されます。Merckは、原因を絞るために病歴、歩行分析、身体検査を組み合わせることが基本だと説明しています。
診察前には、いつ始まったか、突然か徐々にか、運動や転倒との関係、休むと改善するか、過去のけが・手術・服薬を伝えられるようにしておきましょう。原因と重症度が分かって初めて、その犬に合う安静期間、薬、手術、リハビリなどを判断できます。
よくある質問
- 少しびっこを引いていても散歩へ行ってよいですか?
-
原因が分かるまでは走る、階段、ジャンプ、長い散歩を避けます。排泄のために歩かせる必要がある場合も、短時間にとどめ、足を着けない、痛みが強い、悪化しているときは先に動物病院へ連絡してください。
- 肉球や爪に異常がなければ様子見できますか?
-
外見がきれいでも、関節・靱帯・筋肉・骨・神経の問題は否定できません。軽く見えても続く、繰り返す、腫れや全身状態の変化を伴う場合は、見た目だけで判断せず獣医師へ相談します。
- 人用の痛み止めを少量なら与えてもよいですか?
-
与えないでください。人用の鎮痛薬や別の犬の薬は、犬の状態や量によって重い副作用につながることがあります。薬を使う前に獣医師へ連絡し、その犬に処方された薬だけを指示どおり使います。
まとめ
犬が急に足を引きずるときは、肉球の傷や爪の損傷から、関節・靱帯・骨・神経の問題まで幅広い可能性があります。まず運動を止め、救急サインを確認し、犬が嫌がらない範囲で足先を目視します。
大きな事故、変形、立てない、強い痛み、神経症状、止まりにくい出血は救急です。救急でなくても、足を着けない、腫れや傷がある、悪化する、24時間以上続く場合は早めに相談しましょう。人用の鎮痛薬を使わず、安静・記録・獣医師への連絡を初動の中心にしてください。
参考情報
- Cornell University College of Veterinary Medicine「What to expect when taking your limping dog to the veterinarian」(2026年7月17日閲覧)
- Merck Veterinary Manual「Lameness in Dogs」(2026年7月17日閲覧)
- Merck Veterinary Manual「Orthopedic Examination in Small Animals」(2026年7月17日閲覧)
- VCA Animal Hospitals「First Aid for Limping Dogs」(2026年7月17日閲覧)
- VCA Animal Hospitals Urgent Care「Pain or Limping」(2026年7月17日閲覧)
- U.S. Food and Drug Administration「Get the Facts about Pain Relievers for Pets」(2026年7月17日閲覧)
- American College of Veterinary Surgeons「Cranial Cruciate Ligament Disease」(2026年7月17日閲覧)



