この記事は、公開されている情報や犬種に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
この記事の要点
- 耳たぶが急に厚くなり、やわらかい袋のように腫れたら、耳血腫の可能性があります。見つけた時点で動物病院へ連絡してください。
- 腫れだけを処置しても、外耳炎、かゆみ、異物など耳を振る原因が残れば再発しやすいため、耳の中と皮膚まで調べます。
- 家庭で針を刺す、切る、絞る、もむ、きつく巻くことは避けます。以前の点耳薬や人用薬も自己判断では使いません。
- 首の傾き、ふらつき、目の揺れ、嘔吐、ぐったり、ほかの出血、強い外傷があれば、救急を含め当日中に相談します。
耳血腫は「耳に血がたまっただけ」に見えます。ところが、腫れの奥には、犬が頭を振らずにいられない理由が隠れていることがあります。
昨日までは薄かった耳たぶが、朝になると片側だけぷくっと膨らんでいる。触れなくても、いつもより重そうに垂れて見える。突然の変化に、虫刺されなのか、耳の中に水が入ったのかと迷う場面です。
耳介が袋のように腫れたときは、家庭で中身を確かめようとせず、動物病院へ連絡してください。耳血腫なら痛みを抑え、耳の形を守るだけでなく、頭振りやかゆみを起こした背景まで確認する必要があります。

ぷくっとした耳は耳血腫?見えるサイン
耳血腫は、耳介の皮膚と軟骨の間に血液や液体がたまって腫れる状態です。MSD Veterinary ManualとACVSは、耳介の内側に小さな膨らみから耳全体を占める腫れまで生じ、初期にはやわらかく、液体が入ったように感じられると説明しています。
腫れた耳は温かく、赤みや痛みを伴い、重さで下がって見えることがあります。犬が頭を振る、後ろ足で耳をかく、触ろうとすると避けるといった変化も手がかりです。
| 見える変化 | 家庭での受け止め方 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 耳介の一部がやわらかく膨らむ | 耳血腫で見られるが、触感だけでは確定できない | 写真を撮り、動物病院へ連絡する |
| 耳介全体が厚く、重そうに垂れる | 液体が広くたまっている可能性があり、痛みも考える | 押したり絞ったりせず、早めに受診する |
| 硬いしこり、傷、膿、皮膚のただれ | 耳血腫以外の炎症、外傷、腫瘤なども候補になる | 家庭で区別せず診察を受ける |
| におい、耳あか、強いかゆみ、頭振り | 外耳炎など、腫れを起こした背景が疑われる | 耳の中も含めて調べてもらう |
見た目が似ていても、膿がたまった腫れ、虫刺され、かみ傷、皮膚や軟骨の病気、腫瘤などは家庭では除外できません。「水風船のようだから耳血腫」と決めつけず、左右差と変化を記録するところまでにします。

なぜ耳に血がたまる?頭振りだけとは限らない
犬が激しく頭を振ったり耳をかいたりすると、耳介の組織が繰り返し動き、血管が傷んで皮膚と軟骨の間に血液がたまると考えられています。では、頭振りを止めれば原因は解決するのでしょうか。
そう単純ではありません。犬が耳を振る前に、外耳炎、アレルギーによるかゆみ、耳ダニなどの寄生虫、異物、かみ傷や打撲が存在することがあります。まれには、血液が固まりにくい状態や毛細血管の弱さが関係する場合もあります。
- 外耳炎:痛みやかゆみ、におい、耳あかによって頭振りや掻破が増える
- 皮膚のかゆみ:アレルギーなどが耳道や耳介の炎症に関係する
- 寄生虫や異物:急な強い違和感で片耳を気にすることがある
- 外傷:かみ傷、打撲、耳介への繰り返す刺激が関係する
- 出血しやすい背景:ほかのあざや出血があれば全身の評価が必要になる
さらに、Royal Veterinary Collegeの診療記録を用いた研究は、耳の形と発症リスクの関連を示し、耳介の軟骨が繰り返し折れ曲がることが関わる別の経路を提案しました。これは観察研究から導かれた仮説で、個々の犬の原因を耳の形だけで説明するものではありません。
頭振りは重要な手がかりですが、唯一の答えではない。だから診察では、腫れた耳介だけでなく、耳道、皮膚、外傷歴、服薬、ほかの出血まで確かめます。
いつ病院へ行く?基本は気づいたら早めに連絡
PDSAとCornellは、耳介にやわらかい腫れを見つけたら獣医師へ連絡するよう勧めています。耳血腫は自然に小さくなることもありますが、吸収を待つ間も痛みやかゆみの原因が残り、耳介が厚く縮れて変形することがあります。
元気があり、普通に歩き、腫れ以外に変化がなくても、数日間の自己判断の様子見はせず、気づいた日に病院へ電話して受診時期を相談します。腫れが急速に広がる、強く痛がる、頭を振り続ける場合は、同日中の診察が可能か伝えてください。
- 首を傾ける、まっすぐ歩けない、倒れる
- 目が小刻みに揺れる、繰り返し吐く、意識がいつもと違う
- 強い元気消失、呼吸が苦しそう、歯ぐきが白い
- 耳以外にもあざ、鼻血、血便などの出血がある
- 交通事故、転落、かみ傷など強い外傷のあとに腫れた
- 痛みや興奮が強く、安全に移動できない
これらは単純な耳血腫だけでは説明できない可能性があります。夜間でも救急病院へ電話し、移動方法を確認してください。首の傾きやふらつきは中耳・内耳の問題でも起こるため、耳の腫れの付属症状として軽く扱いません。

家庭でやってはいけないこと
膨らみの中身を抜けば楽になるように見えます。けれど、穴を開けても皮膚と軟骨の間の空間が残れば再びたまり、傷口から感染するおそれがあります。PDSAは、家庭で耳血腫を排液しないよう明確に注意しています。
- 縫い針や注射針を刺す、刃物で切る、液体を絞り出す
- 腫れを強く押す、もむ、何度も触って大きさを確かめる
- 保冷剤を直接当てる、長時間冷やす、温める
- 耳を頭にきつく巻き付ける、人用テープで固定する
- 痛い耳へ洗浄液を流し込む、綿棒を奥まで入れる
- 以前の点耳薬、残りの抗菌薬、ステロイド、人用鎮痛薬を使う
自己流の固定は、耳の血流や呼吸を妨げたり、犬が外そうとしてさらに頭を振ったりする危険があります。耳を保護するカラーや包帯が必要かどうかも、腫れの位置と犬の状態を見た獣医師に判断してもらいます。
耳血腫のように見えても、中身が血液とは限りません。家庭で穴を開けないことは、感染を防ぐだけでなく、別の病気を見落とさないための境界でもあります。
病院では腫れと耳の奥をどう調べる?
診察では、いつ腫れたか、大きくなっているか、頭振りやかゆみが先にあったかを確認します。耳介の状態を見たうえで、耳鏡で耳道や鼓膜を観察し、耳あかの検査、必要に応じた液体の確認や血液検査などを組み合わせます。
治療は一つではありません。腫れの広さ、できてからの経過、再発、耳道の状態、麻酔のリスクなどに応じて、排液と薬を組み合わせる方法、管を留置する方法、切開して再びたまる空間を閉じる手術などが検討されます。
「必ず手術」「小さければ放置」と一律には決められません。治療法ごとに再びたまる可能性、通院や自宅管理、耳の形への影響が異なるため、その犬に合う選択肢を獣医師と相談します。
同時に、外耳炎、アレルギー、寄生虫、異物などが見つかれば、その原因への治療が必要です。腫れが引いても頭振りが続くなら、耳血腫の処置だけでは終わっていません。

受診までに安全に記録できること
耳を何度も触らなくても、診察に役立つ情報は集められます。明るい場所で左右を一度だけ見比べ、犬が嫌がらなければ耳介の表と裏を写真に残します。
- 腫れに気づいた時刻と、その後に広がったか
- 左右どちらか、耳介の一部か全体か
- 頭を振る、耳をかく、床へこする回数の変化
- におい、耳あか、分泌物、赤み、傷の有無
- 水遊び、シャンプー、けんか、転倒、異物の可能性
- 食欲、元気、歩き方、首の傾き、嘔吐、ほかの出血
- 過去の外耳炎、皮膚病、耳血腫、現在の薬
痛がる犬を押さえ込んで撮影する必要はありません。頭振りが激しいときは、ぶつかる物を遠ざけ、落ち着ける狭めの空間で待ちます。病院から保護具の指示がない限り、耳を自己流で巻かずに移動してください。
犬の耳血腫でよくある質問
- 小さな腫れで元気もあります。自然に治るまで待てますか?
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自然に吸収される場合はありますが、痛みが続き、耳介が厚く縮れて残ることがあります。外耳炎などの背景も放置できないため、腫れの大小だけで待たず、気づいた日に動物病院へ連絡してください。
- 針で血を抜くだけなら家庭でもできますか?
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できません。感染、再出血、耳介の損傷を起こし、中身が再びたまる可能性があります。耳血腫以外の腫れもあるため、穴を開けずに診察を受けてください。
- 耳血腫は必ず手術になりますか?
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必ずとは限りません。腫れの範囲や経過、再発、耳の中の病気、全身状態により、排液、薬、管の留置、手術などから検討されます。向く方法と再発リスクを獣医師に確認しましょう。
- 耳血腫が治れば、耳掃除を増やせば再発を防げますか?
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耳掃除の回数を増やせばよいとは限りません。過度な洗浄が刺激になる犬もいます。外耳炎、アレルギー、寄生虫、異物など再発に関わる背景を確認し、その犬に合うケア頻度と方法を相談してください。
耳介の腫れは目につきやすいぶん、「中身を抜けば戻る」と考えやすい変化です。守るべきなのは、耳の見た目だけではありません。犬が頭を振り続けた理由まで見つけて、痛みと再発の両方を減らすことが受診の目的です。
参考情報
- MSD Veterinary Manual「Auricular Hematomas in Animals」(耳血腫の形成、背景、治療)
- MSD Veterinary Manual「Disorders of the Outer Ear in Dogs」(飼い主向けの症状と治療概要)
- American College of Veterinary Surgeons「Aural Hematoma」(症状、原因確認、処置後の管理)
- Cornell University College of Veterinary Medicine「Itchy ear problems」(耳血腫と耳のかゆみ、受診)
- PDSA「Aural haematoma (swollen ear flap) in a dog」(家庭で排液しないこと、受診目安)
- O’Neill DG et al.「Reporting the epidemiology of aural haematoma in dogs and proposing a novel aetiopathogenetic pathway」(犬の耳血腫の疫学と耳介形状に関する観察研究)



