この記事は、公開されている情報や犬種に関する一般的な知見をもとにWANLABが独自にリサーチ・編集しています。できる限り正確な内容を心がけていますが、情報が古くなっている場合や個体差によって当てはまらない場合もあります。健康やしつけに関する判断は、必要に応じて獣医師や専門家にもご相談ください。
この記事の要点
- ダルメシアンの高尿酸尿症は、SLC2A9に関わる肝臓・腎臓の尿酸輸送異常が中心です。
- 尿中の尿酸が多いことは結石の土台ですが、遺伝的素因があっても全頭が結石を作るわけではありません。
- 血尿、頻尿、いきみは当日中に相談し、何度も構えて尿が出ない場合は救急受診します。
- 食事療法や薬は石の種類と併存疾患で変わるため、家庭で一律に始めたり中止したりしません。
遺伝子検査は素因を知る手がかりです。結石の有無や閉塞の危険は、排尿の変化と動物病院での検査を合わせて判断します。
尿検査で結晶を指摘され、「ダルメシアンだから結石になるのでは」と心配になり、帰宅後にフードをすぐ変えるべきか迷う場面もあるでしょう。
この犬種には、尿酸塩結石の土台になる遺伝的な高尿酸尿症があります。ただし、高尿酸尿症があることと、今すでに結石があることは別です。まずは排尿の変化と検査結果を分けて考えます。

原因の中心は「酵素不足」ではなく尿酸の運び方
食事などに含まれるプリン体が分解されると、途中で尿酸ができます。多くの犬では、肝臓で尿酸がさらに水へ溶けやすいアラントインへ変わり、尿から外へ出る仕組みです。
ダルメシアンでは、尿酸を肝細胞へ取り込む流れと、腎臓の尿細管で尿酸を扱う流れが非効率です。2008年の研究は、その中心に尿酸輸送体へ関わるSLC2A9の変異があることを示しました。
その結果、比較的溶けにくい尿酸塩が尿中へ多く出る高尿酸尿症になります。尿が濃い、結晶が育つ条件が重なると、膀胱や尿道などで尿酸塩結石になる可能性が高まります。
遺伝子型は素因を示すが、結石の有無までは示さない
UC Davisの検査では、正常型をN、高尿酸尿症に関わる型をHUとして、N/N、N/HU、HU/HUで結果を受け取ります。HU/HUは高尿酸尿症の素因を示しますが、超音波で石が見つかったという診断ではありません。
| 情報 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| 犬種・血統 | 検査や観察を相談する理由 | 個体の遺伝子型 |
| SLC2A9検査 | 既知変異のコピー数と高尿酸尿症の素因 | 現在の結石の有無 |
| 尿検査 | 尿の濃さ、pH、結晶、感染の手がかり | 石の位置と全成分 |
| 画像検査・結石分析 | 石の有無、位置、構成成分の判断材料 | 将来の再発を完全に予測すること |
従来のダルメシアン系統ではHU/HUが広く固定していた一方、ポインターとの戻し交配から作られたLUA(low uric acid)系統には正常型が導入されています。いまは犬種名だけで個体の結果を決めつけられません。
逆方向の注意も必要です。SLC2A9検査がN/Nでも、肝臓の血管異常など別の理由で尿酸塩結石ができることがあります。遺伝子検査は、排尿症状を調べなくてよい証明にはなりません。

高尿酸尿症があっても全頭が結石を作るわけではない
結石を作ったダルメシアン10頭と、作っていない5頭を比べた小規模研究では、尿中の尿酸量だけで両群を分けられませんでした。高尿酸尿は重要な土台ですが、それだけで発症を説明し切れないという結果です。
尿の濃さやpH、結晶化を抑える成分、食事、飲水、尿の滞留、肝疾患など、複数の条件が重なります。「変異があるから必ず発症する」とも、「今は無症状だから今後も問題ない」とも言えません。
1981〜2002年の北米記録を使った症例対照研究では、雄のダルメシアンは雌より尿酸塩結石との関連が高く出ました。ただし古い提出・診療記録の関連であり、雌が安全という意味でも、現在の発症率を示す数字でもありません。
血尿・頻尿・いきみは、石の種類を当てずに相談する
結石が膀胱や尿道を刺激すると、尿に血が混じる、排尿回数が増える、長く構える、少量ずつしか出ない、家の中で漏らすといった変化が見られます。これらは尿路感染や別の結石でも起こるため、見た目だけで尿酸塩結石とは決められません。
- 記録して早めに相談:普段どおり尿が出ていても、回数、量、色、姿勢、痛がる様子の変化が続く。
- 当日中に相談:血尿、強いいきみ、少量の排尿を何度も繰り返す、腹部を気にする。
- 救急受診:何度も排尿姿勢をとるのに尿が出ない、数滴だけで苦しむ、嘔吐、元気消失、食欲低下を伴う。
尿が出ない疑いは、待てないサインです。完全な尿道閉塞は腎機能や心拍へ影響し、膀胱破裂につながることもあります。お腹を強く押して確かめたり、水を大量に飲ませて流そうとしたりせず、すぐ動物病院へ連絡してください。

診断では石の有無・種類・別の原因を分ける
動物病院では、身体検査、尿検査、培養、血液検査、超音波やX線などを組み合わせます。尿酸塩結石は通常のX線で写りにくいことがあるため、X線がきれいでも症状があれば評価を終えない場合があります。
実際に石が採れたら、成分分析が再発予防の基礎になります。尿中に結晶があったという情報だけで、石の全成分や治療法が確定するわけではありません。
尿酸塩結石にはSLC2A9型の高尿酸尿症だけでなく、門脈体循環シャントなど肝臓に関わる原因もあります。犬種や遺伝子結果に引っ張られず、血液検査や胆汁酸検査などが必要かを獣医師が判断します。

家庭では水を制限せず、食事と薬を一律に決めない
症状がない段階でできる基本は、新鮮な水へいつでもアクセスできるようにし、排尿を長く我慢させないことです。飲水量を増やす工夫が必要かは、持病や食事も含めて動物病院へ相談する内容です。
尿酸塩結石が確認された犬では、低プリン食、尿をアルカリ側へ調整する方法、アロプリノールなどが検討されることがあります。しかし、石の種類や肝疾患、ほかの病気で計画が変わるため、一つのやり方には当てはめられません。
特にアロプリノールは、条件が合わないと別のキサンチン結石につながることがあります。人用薬や以前の処方を使い回さず、食事療法と薬を同じ診療計画の中で管理してください。
「ダルメシアンだから内臓肉を全部禁止」と家庭だけで決めるより、遺伝子型、症状、尿検査、画像、石の分析、肝機能をそろえたほうが、必要な制限と不要な制限を分けられます。
診察へ持っていくと判断しやすい情報
- 排尿した時刻、回数、おおよその量、勢い、姿勢
- 尿の色、血の見え方、室内での失敗、痛がる様子
- 飲水と食欲、嘔吐、元気、腹部を気にする変化
- 現在のフード、おやつ、サプリ、薬の名前と開始日
- SLC2A9検査、過去の尿検査、画像検査、結石分析の結果
排尿動画は、犬の邪魔をせず安全に撮れる場合だけで構いません。記録がなくても、尿が出ない疑いがあれば撮影や採尿を優先せず受診します。
ダルメシアンの尿酸結石でよくある質問
- HU/HUなら必ず尿酸結石になりますか?
-
必ずではありません。HU/HUは高尿酸尿症の素因を示しますが、結石形成には尿の濃さ、pH、食事、飲水、結晶化を抑える因子なども関わります。症状と尿・画像検査を合わせて確認します。
- LUAダルメシアンなら尿路結石の心配はありませんか?
-
SLC2A9型の高尿酸尿症リスクは下げられますが、ほかの種類の結石や肝臓に関わる尿酸塩結石までゼロにはできません。排尿の変化は犬種や系統にかかわらず相談します。
- 尿に結晶があれば、低プリン食へ変えるべきですか?
-
結晶の種類、採尿後の時間、尿pH、感染、石の有無で意味が変わります。自己判断で食事を大きく制限せず、尿検査と画像検査、必要なら結石分析の結果から獣医師と決めます。
- 夜間でもすぐ受診すべき排尿サインは何ですか?
-
何度も排尿姿勢をとるのに尿が出ない、数滴だけで苦しむ、腹痛、嘔吐、元気消失がある場合です。尿道閉塞は救急なので、採尿や様子見を続けず、受診可能な動物病院へ連絡します。
ダルメシアンの尿酸代謝は、犬種の個性ではなく管理できる健康情報です。遺伝子の結果だけで未来を決めず、排尿の変化を早く拾い、石の種類と原因に合った計画へつなげましょう。
参考情報
- Bannasch et al. (2008) — Mutations in the SLC2A9 Gene Cause Hyperuricosuria and Hyperuricemia in the Dog
- Safra et al. (2006) — Linkage analysis with an interbreed backcross maps Dalmatian hyperuricosuria to CFA03
- Albasan et al. (2005) — Sex and risk of urate uroliths in Dalmatians
- Carvalho et al. (2003) — Urinary inhibitors of crystallization in the Dalmatian model
- Feeney et al. (2017) — Canadian canine urolith submissions, 1998–2014
- UC Davis School of Veterinary Medicine — Hyperuricosuria
- Merck Veterinary Manual — Urolithiasis in Dogs
- American College of Veterinary Surgeons — Urinary Obstruction in Dogs
- Minnesota Urolith Center — Are xanthine stones dissolvable?



